それでも海外でSEとして働いてみたいという願望から「海外」勤務できる日系企業の求人を探して転職した。
「シンガポールなど海外でSEとして働くには何をすべきか」という点を、日本でのSE経験しかなかった私個人の考えとしてまとめておきたいと思う。
SEとして海外転職する際の国の選び方
新卒で入った会社で、SEとして3年ほど日本で働いた後、当時の会社では海外勤務は難しいと実感したこともあり、SEの海外駐在員を募集している求人を見つけて転職した。
東南アジアだとタイ、ベトナム、マレーシアなども候補だったが、治安面やキャリアパスを考えた時に、シンガポールなど本社が多い傾向のある国のほうが将来性があると感じ、最終的に内定を貰えたシンガポールにある日系企業でSEとして働くことを選んだ。
ITがシンガポールで盛んな理由としては、シンガポールを起点にASEANエリアへのサービス展開を推し進めるのに勝手がいいこと、優秀な人材(プログラマは安く優秀&オフショアでのコーディング)を集めやすい現状がある。
今自分は日本での2年のSE経験を引っ提げて、シンガポールに転職してきた。当然スキルだけでは現地人材に勝てないが、日系金融機関の基幹システム案件を扱う会社などが、PL的な役割も任せられる日本人SEを欲していることから、日本在住にも関わらず、意外と転職時には求人に困らなかった。
そんな話を知り合いにすると、意外と関心を引くようで、質問攻めにされることもしばしばだった。そこで、このエントリでは、私のような若手SEがシンガポールでの転職をどう進めたのか、生の声をまとめておこうと思う。
シンガポールはSE需要が高いのか?
現在すでにある程度市場が飽和してきていると言われているシンガポールだが、ことIT業界に言えば、まさにこれから拡大の傾向がある。というのも、他の国に目を向けてみれば、まず初めに発展するのは金融業である。お金が回る、経済が循環する仕組みができて初めて、IT産業というものは需要が拡大していくからである。
例えば、大手の日系企業、DeNAやGlee、Yahooなどシンガポール進出をしてからやっと5年程度たった。しかし、進出間もない企業が一気にアクセルを踏んでサービス拡大をすることは少なく、徐々にシンガポール式に馴染み、それから拡大のための現地人材、駐在員派遣、現地日本人雇用などをしていく。これら日系企業は、日本では大手であってもスタート時は数人規模でシンガポール事務所を立ち上げている。
また、現地のシンガポール系のIT企業もまた、金融社会の広がりとともに、経験を積んだ人材が企業という形で、IT産業は盛んになってきている。シンガポール政府は、国内企業の支援は積極的であり、今まで優遇してきた金融に代わり、第2の柱としてIT産業への注力を始めている。日系企業のIT進出も盛んで下記の参考エントリを読めば、東京からシンガポールに移転する企業も増えている。
東南アジアでは日本人のSE人材は枯渇している
このように、日本人を必要としている企業は、日系のみならず、現地のIT企業も金のなる木である日本進出をもくろみ、人材獲得が激しくなってきている。
日本人営業マンは、シンガポールでの需要は高いのは、既知の通りであるが、一方でプロダクトを日本向けに作成する日本人SEの存在も近年高まりを見せている。売り手である日本人はいても、開発をマネージできる日本人SEがいないからである。
しかも、開発にかかわるのは日本人だけでないため、ある程度の語学力が求められる。特に、英語については、インド人、マレーシア人、シンガポーリアンなどなど、なまりも非常に強く口頭でのコミュニケーションは非常に慣れが必要となってくる。
一方で、日本はメール社会で進行が遅いというが、シンガポールもそれは同様で、英語によるメールでのやり取りが多い。これは口頭でのコミュニケーションが、日本に比べると疎通が難しい場合があるうえ、言った言わないの水掛け論に発展するのを避けるためである。
ここに逆に言うと、日本人SEが食い込むチャンスがある。日本人は現地でも真面目、勤勉、納期を守るというイメージが強く、たとえ日本向けの開発でなくても、SEとしてマネージメントをお願いしたいというケースが少なくないからだ。一方で、現地の仕事に慣れた日本人SEの市場価値は高く、引き抜きの話も多い。
ドイツのベルリンではSEは働きやすい理由
シンガポールなど東南アジア以外だと、ドイツのベルリンはフリーランスとしてのビザが下りやすく、現地企業に雇用されなくても労働ビザを貰うことは可能。
ただし、SEとしてフリーランスで働くのは厳しいので、いわゆる下請け仕事としてリモートで顧客を獲得できるコネクションは必要。底辺フリーランスエンジニアだと、クラウドワークス、ランサーズなどで地雷クライアントを獲得しつつ、優良顧客を増やしていく手法もあるが、一旦現地に行って現地企業でもSEとしての雇用チャンスはないか確認してみるのもいいと思う。
実際にベルリンでエンジニアとしてフリーで働いている人はいるが、割と日本と変わらない働き方で忙しそうなのと、ファッション海外移住感が強いため、どうしても海外で働いて箔をつけたいなどでなければ、ベルリンは避けたほうがいいと思う。
ベルリン以外にも、ミュンヘンなどもあるが、フリーランスにとって一番重要な物価の高さなどは、どうしても劣るのでベルリンに落ち着くかと思う。日系企業も多いので最悪現地に就職すればOK。
日本人IT人材としてのSEが海外転職する方法
日本人SEの獲得については、上記の通り、提示年収が高まり、企業側も予算内で優秀な人材確保に苦労している。そのため、日本でのSE経験のある人材は、シンガポールでは下記の理由から、いまだに人気が高い。
・日本の慣習を理解している
・年収が安くすむ
・納期管理・チームマネージメント力が高い
上記の理由は日本にいれば、そこまで評価される要素はない。むしろ、シンガポール転職を目指すような人材にとっては、そんなことが評価されるのか?と驚きを隠せないはずである。しかし、日本というフィールドを出て、多国籍の環境で仕事をすれば分かるが、日本人という素養は、明らかに多人種とは異なる。勤勉・真面目、高いエグゼキュート力は、圧倒的に雇われという立場に向いているのである。下記より、それぞれの評価ポイントについて説明する。
・日本の慣習を理解している
これは、日本で数年間働いた経験があれば、誰しもが身につくものではある。しかし、他国の人間からすると日本人がほとんどオートマチックに身に着けている、上司を敬う姿勢、職場で問題を起こさない態度、真面目に仕事に取り組む心というのは、筆舌に尽くしがたいのである。海外で成功している研究チームなどでよく言われるのが、アメリカ人上司と日本人プログラマーのコンビほど手ごわいものはないという。これは、アピール下手の日本人を、アピール好きなアメリカ人上司が的確にリードし、やったら評価されるであろう仕事を的確に日本人に振ることで、勤勉な日本人は仕事を丁寧にこなし内外で評価されるというケースである。
日本人は、元来使われる能力にたけており、中間管理職を任せたら世界一の人種であるといえよう。そのため、表には出てこないSEという仕事は、ほぼ確実に日本人という性質にマッチしている。シンガポールでは、そういった姿勢が評価されており、日本人SEの評判は高い。(プログラマーについては、インド人など多人種の評価が高い。これは、圧倒的な技術力だけでなく、給与水準の安さも起因している)
・年収が安くすむ
先ほど、IT人材としてのプログラマーのインド人の評価が高いことは説明したが、日本人であっても現地でジョブホッピングを繰り返す日本人人材や中華人材に比べて、日本でずっと働いていただけのウブな日本人SEは雇いやすい。ビザについても、日本との仕事の関連性が高いSEであれば、高確率でかつ迅速にビザ下りるため、現地企業にとっては、計算しやすい転職だと考えられている。
一方で、年収が安いというのは、会社側の道理であり、日本人全体でみると、平均的なSE職の給与よりも、シンガポールでは待遇が厚くなる。これは、日本ではデスマーチが頻繁に起こり、かつ人材の流動性が低い劣悪な状況に対して、シンガポールでは納期の概念は比較的緩く(そのため、日本人の勤勉さが目立つ)にも関わらず人材の流動性が高く、給与を上げないと人材が定着しないシンガポールの事情がある。※日本が異常なだけでシンガポールが健全。本来であれば日本でのSE職が給料高くなるべき。
・納期管理・チームマネージメント力が高い
元来の中間管理職的気質を持つ日本人は、意外と多人種チームを一つにまとめて、上司に取り次ぐ能力が高い。これは場の調整能力だけでなく、残業も多少は厭わない姿勢が上司にも、チームからも重宝される傾向があるからだ。あの日本人がカバーしてくれるから、仕事も楽だとか、納期遅れそうでもあいつが何とかしてくれると言った信頼感が生まれやすい。恩をあだで返さないのは、他国以外でも共通の心であるから、そういった姿勢を見せ続ける日本人SEは発注先からもチームからも信頼されやすいのである。
また、シンガポールでは、納期厳守ではあるが、日本よりはゆるい。言葉で伝えるのは難しいのだが、初受注以外ではお互いさまということで遅れがちな場合もある。そんな中、日本人は染みついた絶対に納期を守ろうとする姿勢が、シンガポールでは珍しく、信頼の対象となりえる。IT系という、比較的どんな種類の人間も集まりやすい職場においては、その姿勢は明らかに目立つのである。
日本人SEが海外転職するのに効果的なサイトについて
シンガポール転職はIT業界の場合であれば、シンガポール現地から就職活動を進める必要はない。やはり、IT企業ともなれば、ミーティングは会議室ではなくSkypeなどテレビ会議室手無を導入しているからだ。特に、SEであればある程度の技術的なやりとりもあるし、メッセンジャー機能を使って面接したほうが手っ取り早い。とはいえ、面接はテレビ会議で良くても、面接のアポイントやアプライする会社については、MonsterやLinkedinなどでは限界がある。※シンガポールでは、候補者からレジュメがたくさん来るので、わざわざスカウティング機能を使ってまでアプライしてくるかもわからない候補者にアプローチしない。
その場合に、比較的有効な手段となるのは、日本とシンガポールに事務所がある転職エージェントである。ちなみに、比較的といったのは最も有効な転職手段というのが、やはり知り合い経由の紹介だからだ。これは、シンガポールもアメリカでも主流である。というのも、大体の候補者は自分の経歴を嘘つくからである。日本の新卒学生が、全員スーパーマンのような活躍を大学でした、とシュウカツで説明するのと同様、中途採用でもザッカーバーグ並みの恐ろしい能力を持った人材(自称)がアプライしてくるからだ。
そのため、現地企業で、日本人人材が欲しい企業は、日系の転職エージェントに声をかける。やはり日本人は信頼感が高く、エージェントがしっかりとフィルターを通して、優れた人材を紹介してくれると企業側は信じているからである。そこで、最後に下記に日本人SEがシンガポールでIT業界に転職を狙ているのであれば、現地ではある程度権力を持っているエージェントを掲載しておく。
・マイナビエージェント
※日本人SEを欲しがっている企業がかなり多く、条件、待遇も納得できる案件が多い。シンガポールなど東南アジアを中心に、キャリアアップできそうな求人の紹介が多く、実際に転職してみようと感じることができた。
・dodaエージェント
※案件はマイナビに比べて少ないが、東南アジアを中心にある程度の求人紹介があったので、1社だけでは不安であれば利用する価値はあると思う
たまに、SEで登録しても担当エージェントがSEがどんな仕事をするのかもわからない状態で、求人案件を紹介してくるときがある。名前は多くは出さないが、一度でも転職サイトに登録した方ならわかるはずである。しかし、上記のエージェントであれば、元SEとかプログラマ(今はエージェントをやってるくらいだから実力は2流か、相当な変わり者)で話の出来るエージェントをつけてくれるので、時間を無駄にしたということはないだろうとは思う。
長々と書いてきたが、シンガポールでのチャンスは比較的まだ多い。少なくとも日本で満員電車で毎日デスマーチにまい進しているぐらいであれば、シンガポールはまだまだ悪くない選択肢である。ちなみに、さらに優れた環境をがあるのはアメリカではあるが、労働許可が下りにくいため、現実的ではないことを先にお伝しておく。